能登高校魅力化プロジェクト

お知らせ

2026.07/30

「能登のファンがまた次のファンを連れてくる」を目指して ~生徒3名が語る能登ツアー企画への想いと成長の軌跡~

2026年の夏、高校3年生の高山さん、境谷さん、森さんが企画した体験型ツアープロジェクト「あばれ祭フル体験ツアー」が開催されました。

このツアー企画は今回で4回目を迎え、これまでに延べ約45名の方々が参加しています。。

2025年の「総合的な探究の時間」の年間テーマは「地域を元気にする(今よりも良くする)」で、生徒たちは「地域」を「自分以外の誰か・何か」と定義し、それぞれの興味や疑問をもとに探究活動を進めました。

そして、すべての始まりは当時の夏に総合的な探究の時間で行なった生徒4人のチーム活動でした。

石川県能登町の「あばれ祭」について
これは、毎年7月に開催される勇壮な夏祭りです。

約350年前の悪病退散の祈願が起源で、日本遺産にも認定されています。
「暴れるほど神様が喜ぶ」とされ、初日は火の粉が舞う大松明の周囲を約40基の巨大なキリコが乱舞します。
2日目は神輿を川や火の中に投げ入れ、容赦なく叩きつける過激な姿が圧巻です。
震災を乗り越え、地域の強い絆と復興への熱い願いを込めて受け継がれている能登を代表する奇祭です。

先生のアドバイスをきっかけに始まったツアー

最初はメンバーそれぞれが抱く問題意識や疑問点がバラバラでした。話し合いを重ねる中、唯一の共通点だったのは「何か大きなことを成し遂げたい」「お金をたくさん稼げるようなプロジェクトを立ち上げたい」という想いでした。

彼らはこの考えを総探で伴走している先生に相談し、「お金持ちの人を能登にたくさん誘致できれば、この目標が達成できるのではないか?」というアイデアに辿り着きました。
そこで、高校生による能登町・宇出津のツアーを企画することになりました。

当初は先生のアドバイスを受けて「なんとなく開催することになった」というツアーだったようです。
しかし今振り返ると「自分たちはかなり明確な目標を持っていたのかもしれない」と、高山さんと境谷さんは振り返ります。
それは「能登の魅力を伝え、ファンを増やすためのツアーを作りたい」という目標でした。

今回は、彼らがどのような思考でツアーを企画し、何を感じ、どのように変化したのかをお伝えします。

ツアー開催のあゆみ:手探りから始まった挑戦

この生徒3名の挑戦は、2025年7月の「あばれ祭りツアー」から始まりました。
災害NGOタビイク様に協力していただきながら、総勢19名の参加者をお迎えしました。

ツアーでは、キリコの巡行ルートを歩きながら、彼たちが自ら町の魅力や祭りの歴史を解説しました。
それは「ネットにはない、地元の高校生だからこそ伝えられる情報」の価値に彼ら自身が気づいた瞬間でした。
参加者が海越しに見える立山連峰を眺めて感動する姿を見たとき、境谷さんや高山さんたち自身も、「自分の町はこんなにもすごい場所なんだ」「自分がずっと見てきた風景は、これほどまでに人の心を動かせるのか」と初めて実感したのです。

第1回目のツアーを開催した後も、散策や写真洗浄ボランティア、地元住民とのBBQ交流などを通じて、「能登のファンがまた次のファンを連れてくる」という循環を生み出すツアーを2回開催しました。
そして、今年もあばれ祭りツアーを実施しました。

境谷さんは、ツアーを開催するうえで大切にしている想いをこう語ってくれました。

「大人だけでなく学生の参加者も積極的に募り、単なる観光にとどまらず、現地のリアルに触れてもらいながら参加者自身も巻き込んでいくことです。 学生同士だからこそ共有できる価値や経験があり、能登に対して本気で興味を持ってもらうことが、将来的に安定した『関係人口』の創出につながると信じているからです。」

初回のあばれ祭ツアーはキリコを担ぐ行程を入れていませんでした。
しかし、2026年のツアーの開催では2日間かけて町内会の方々と共にキリコを担ぐ体験をツアーに組み込みました。
それは高校生たちの「現地のリアルに触れてほしい」という想いを形にしたものでした。

境谷さんは、ツアー中に能登のリアルを伝え参加者を地域の一員として巻き込むことを大切にしています。

総探が教えてくれた「失敗を恐れないマインド」

この3人は、この活動を通じて数え切れないほどの力を身につけました。

なかでも境谷さんにとっては、最も大きな変化が「挑戦することへの抵抗がなくなったこと」でした。失敗しては修正し、また挑戦する。探究学習で学んだ「PDCAサイクル」を机上の空論で終わらせず、実際のツアー運営を通じて徹底的に回し続けました。中でも特に重要視したのは「Check(評価)」です。アンケートで「また能登に来たい」という言葉をもらうたびに、目指す「関係人口の創出」へ確実に近づいていると実感し、それが次の挑戦への大きなモチベーションへとつながっていきました。

PDCAサイクルとは

PDCAサイクルは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の4段階を繰り返しながら継続的な改善を図る、探究プロセスのマネジメント手法です。

このサイクルを、探究活動に欠かせない「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」のプロセスに当てはめて回していくことで、課題発見力、問題解決能力、論理的思考力・表現力を育むことができます。

ツアーはあくまで目的達成のための手段

彼らの最終目標は、「関係人口の創出を通じて、伝統祭礼における担い手不足などの地域課題を解決すること」です。

境谷さんは、「このようなツアーの開催は、本当にその目標を達成するための最善の手段なのか」「ツアーを開催すること自体が目的になってしまっているのではないか」という問いを自分の中に持ち、深く悩んだ経験があると語ってくれました。

たしかに、高校生が企画したツアーには至らない点や未熟な部分もあります。
しかし、自分たちの言葉で能登のリアルを語り続けることで、「高校生ならではの等身大の声」が参加者の心に届くと彼らは信じています。

自分たちのツアー開催を通じて「目標に着実に近づいている」という手応えがあるからこそ、今年も開催しようと決意できたのです。

授業の枠を超えたツアー

高校3年生の「総合的な探究の時間」は、2年生まで取り組んできた探究活動を振り返りながら、自分自身の進路を探究していく時間となります。
そのため、ツアーを開催してきた生徒たちが「総合的な探究の時間」の授業の中でツアーについて検討する時間はほぼなりました。

ですがそれでもなお、彼らは今年もあばれ祭ツアーを開催しました。
境谷さんは、「ツアーの開催は、もうある意味、総探の枠組みとは関係なくなった」と言い切ります。

総合的な探究の時間をきっかけとして始まったツアーは、彼らに「自分が住む地域」について深く考える機会を与えました。
また、そこで教わった探究の基本があるおかげで、闇雲に行動するのではなく、一定の枠組みを持って物事を進めることができました。

さらに、初期の段階ではぼんやりとしていたアイデアを、先生や支援してくれた大人たちとしっかり議論し、やりたいことを明確にできたように、総探は彼らにとってすべての活動の原点であり、大切な「すべてのきっかけ」となった存在でした。

「ツアーの開催を通じて、参加者はもちろん、自分もこの土地のことがより大好きになった」と、境谷さんが最後に話してくれました。
彼らにとって総探が、高校を卒業したその先の生き方や在り方にまで影響を与える活動であったようです。