1月1日の震災では、能登高校の多くの教職員も被災し、中には不幸にも亡くなられた先生もいらっしゃいました。
能登高校の教職員は発災直後から、生徒の安否確認や校舎・寮の被害状況確認、就職内定先との連絡、大学受験生への対応、県教委や関係各所との調整・交渉、学校再開に向けた準備、そして学校再開後は対面とオンラインのハイブリッド形式での授業を作って実施するなど、生徒たちの学びの環境を保障するため、希望する進路を閉ざさないため、高校を再開させるために、寸暇を惜しんで尽力されました。自らも被災者であるにもかかわらず、自分や家族のことは後回しにして、公私ともに苦労・心労でいっぱいいっぱいの状態が続いていました。
そうした状況を少しでも改善するために、支援者である教職員への支援が必要だと考え、能登高校魅力化プロジェクトでは、公益財団法人ほくりくみらい基金の「令和6年能登半島地震 災害支援基金」を活用し、能登高校の教職員の皆さまに1人60分間のマッサージを提供しました。わずかな時間だけでも心と体を癒し、英気を養っていただくための取り組みです。
なおマッサージ施術は震災以前から能登町内でマッサージ業を営む方にお願いしました。
▶マッサージを受けた教職員数: 46名
▶実施日: 2月1日から16日のうちの10日間
マッサージを受けた教職員からは以下のような声をいただきました。
・眠ってしまうほどリラックスできた
・体がポカポカになった
・体が軽くなった
・マッサージを受けた当日、久しぶりによく眠れた
・緊張状態が続く中でこんな時間を持てるとは思わなかった
・またマッサージを受けたい
・このマッサージを楽しみにしている先生が結構います
・職員室ではこのマッサージを受けると天国に行けると言われています
またマッサージ施術者と教職員とのやりとりでは以下のようなエピソードがありました。
・施術後に涙ぐんで「マッサージを受けられて良かった、来てくれてありがとう」と言ってくれた
・「ずっと眠るのも難しかったし、休まるときがなく疲れが取れなかった」と話してくれた
10日間のマッサージ施術を終えて、施術者からは次のような感想を聞きました。
・どの教職員も身体の疲れはもちろんのこと、会話や背中・肩・首・頭部のこわばり・手足(身体の末端)の冷えから、強い精神的な疲労を感じました
・施術を受けたことがない方、あまり受けたことがない方がほとんどで、施術前はあまり期待していない様子もありましたが、施術後には表情が明るくなり、筋肉のやわらぎ、手足が温まる様子から効果が見受けられました
・ほとんどの方々から施術後に直接、嬉しい言葉をいただきました
教職員は被災者でありながら支援者の立場となってしまうため、身体的・精神的な疲労が強くあるにも関わらず、なかなか自己のケアに意識を向けることが難しい状況ですが、今回こうして第三者の提案で半ば強制的にマッサージを受けたことは、長期戦となるであろう復旧・復興の道のりにおいて教職員が自己のケアを大切にすることの必要性を再認識するきっかけになったのではないでしょうか。
また、発災後は社会が非常事態となり、被災者が自己のケアを後回しにせざるを得なくなったり、ボランティアによる癒しのプログラムが提供されたりする中で、「有償で、正規料金で、マッサージを受ける」というニーズが少なくなり、マッサージ施術者は事業継続が現実的ではないと考えていたそうです。ですが今回は公益財団法人ほくりくみらい基金の「令和6年能登半島地震 災害支援基金」を活用して、マッサージを正規料金で依頼し、震災前と同様に正当な対価を得られる仕事として行なっていただきました。ここにも今回の企画の意義・目的がありました。
発災から2ヶ月半が過ぎ、能登高校では生徒たちの明るい声が聞こえるようになり、各所に避難していた教職員も出勤できるようになり、水道もようやく復旧し、寮生の住まいの用意にも目途が立ちました。4月からの新学期を迎え準備が徐々に整いつつあります。
しかしながら仮設寮の設置も寮の再整備、被害の大きかった柳田校舎に集中する農業関連設備の再整備など、復旧・復興への道のりはまだまだ続きます。この先、教職員の皆さまが心身の健康を維持しながら、能登高校が教職員にとっても魅力的な職場であり学びの場となりように、能登高校魅力化プロジェクトは引き続き支援していきます。